心の不調は、人によってあらわれ方がさまざまで、「これが病気なのかどうか分からない」と感じる方も少なくありません。
ここでは、心療内科でよくみられる主な症状や病気について、簡単にご説明します。
※あくまで一般的な説明であり、実際の診断は症状の経過や生活への影響などを含めて総合的に判断する必要があります。ご自身やご家族の状態と照らし合わせながら、参考としてお読みください。
何をしても気持ちの落ち込みが続く、興味や関心がわかない、考えがまとまらない、自分を責めてしまう、眠れない、食欲がないなどの症状が続く病気です。原因としては、仕事・学業・人間関係などのストレスによるものや、身体の病気(例:てんかん、甲状腺機能低下症など)に伴うものがありますが、明らかなきっかけがなく発症することもあります。
特に、原因がはっきりしないうつ状態を繰り返す場合には、「双極性障害」という別の病気の可能性もあり、その場合はうつ病とは異なる治療が必要になります。うつ病は治療により回復が期待できる病気です。回復までに時間がかかることもありますが、焦らず治療を続けることが大切です。
不安を感じたり緊張したりすることは誰にでもありますが、不安や緊張が強すぎたり、長く続いたりして生活に支障が出る場合には、不安障害という病気の可能性があります。
不安障害には、以下のような病気が含まれます。
理由がはっきりしない不安や緊張が慢性的に続く
動悸や息苦しさなどの発作が突然起こる
人前で話す・食事をするなどの場面で強い不安を感じる
手洗いを何度も繰り返すなど、
「やめたくてもやめられない行動」が起こる
高所・閉所・乗り物など、特定の対象に強い恐怖を感じる
パニック障害は不安障害の一つで、「パニック発作」と呼ばれる、突然の強い不安や恐怖とともに、動悸、発汗、震え、息苦しさなどの身体症状があらわれる病気です。発作は状況とは無関係に突然起こり、数分でピークに達するのが特徴です。何か強い出来事があったときに起こる一般的な「パニック」とは異なります。
また、「また発作が起きたらどうしよう」という予期不安や、発作が起きたときに逃げられない場所(電車や人混みなど)を避けるようになる広場恐怖を伴うことも多くあります。その結果、仕事や学校に行けなくなるなど、生活に大きな支障が出ることもありますが、適切な治療により多くの方で回復が期待できる病気です。
不眠症とは、寝つけない、夜中に目が覚める、朝早く目が覚めてしまうなどの睡眠の問題が続き、日中の生活に支障が出ている状態を指します。
このページで紹介している他の心の病気に伴って、不眠症状があらわれることもあります。
他の病気を伴わない不眠症は「原発性不眠症」と呼ばれ、治療は主に薬物療法と生活指導になります。
睡眠薬の中には依存性などの副作用が問題となるものもあり、不安を感じる方も少なくありません。薬物療法を行う場合には、適切な薬の選択や使い方について主治医とよく相談することが大切です。
仕事、学業、家庭の問題、人間関係、経済的問題、環境の変化、事故や災害など、私たちは日常的にさまざまなストレスにさらされています。こうした強いストレスが原因となり、心に不調があらわれる病気も、心療内科で対応する重要な疾患です。
根本的な対応としては、原因となるストレスを見直し、働き方や通学方法などの環境を現実的に調整していくことが重要です。必要に応じて、うつ症状には抗うつ薬、不眠には睡眠薬など、補助的な薬物療法を行うこともあります。
統合失調症は、実際にはない声が聞こえるといった幻覚や、「誰かに監視されている」「悪口を言われている」などの妄想、考えがまとまりにくくなる、感情の変化が乏しくなるなど、さまざまな症状を伴う病気です。
思春期から20代に発症しやすく、約100人に1人が発症するとされる、比較的頻度の高い病気です。
治療は薬物療法とリハビリテーションが中心となります。病状によっては入院治療が必要となる場合もあり、当院では専門医療機関と連携しながら治療を行います。
認知症とは、もの忘れや考える力・判断力・理解力などの脳の働きが進行性に低下し、日常生活でこれまで普通にできていたことが少しずつ難しくなっていく病気です。物忘れから始まるアルツハイマー型認知症が最も多いですが、レビー小体型認知症や脳血管性認知症など、さまざまなタイプがあります。
治療にあたっては、まずうつ病やてんかんなど、認知症と間違われやすく、治療可能な病気を除外することが重要です(高齢者てんかんも参照)。認知症を完全に治す治療は現在のところありませんが、進行を遅らせる治療や、イライラ・落ち込みなどの周辺症状に対する治療は可能です。また、行政・福祉サービスを利用するための診断書や意見書の作成も行っています。
自閉症スペクトラムとは、「人との関わり方」「コミュニケーションの仕方」「こだわりや感じ方」に特徴がある発達のパターンです。生まれつきの脳の発達の特性によるもので、育て方や性格が原因ではありません。
「スペクトラム」とは連続体という意味で、特徴のあらわれ方には幅があり、「正常」と「障害」を明確に分けるものではないという考え方に基づいています。主な特徴として、対人関係やコミュニケーションの難しさ、こだわりの強さ、感覚の過敏さや鈍さなどが挙げられます。
診断には生育歴や行動・コミュニケーションの様子を詳しく確認する必要があり、当院では自己記入式のアンケートなども活用しています。大人になってから気づかれるケースも少なくありません。自閉症スペクトラム自体を治す薬はありませんが、福祉サービスの活用や、不安・こだわりに対する薬物療法を行うことがあります。
注意欠陥多動性障害(ADHD)とは、集中する力、落ち着いて行動する力、計画的に動く力に困難がある発達障害です。
脳の発達の特性によるもので、育て方や性格が原因ではありません。
「じっとしているのが苦手」「話を聞いていても別のことが気になる」「思いついたことをすぐ口にしてしまう」「忘れ物やなくし物が多い」などの症状がみられます。診断では、幼少期からの行動の特徴について、質問票や心理検査を用いながら、本人やご家族から詳しく聞き取ります。
ADHDも自閉症スペクトラムと同様に、大人になってから診断されることがあります。治療は薬物療法と生活・環境の工夫を組み合わせて行います。なお、当院では一部の治療薬(コンサータ、ビバンセ)は処方できません。あらかじめご了承ください。
ここに記載した症状はあくまで一般的な説明であり、実際の診断は専門的な評価が必要です。
似た症状でも、原因や治療方法が異なることは少なくありません。
「自分はどれに当てはまるのだろう」と一人で判断せず、気になる症状があれば早めにご相談ください。
症状や生活の状況を丁寧にお聞きしながら、必要な診療を一緒に考えていきます。